※本記事は複数の相談事例を参考に再構成したモデルケースです。
「今日はよろしくお願いします。」
少し緊張した面持ちで相談にいらしたのは、共働きで小学生のお子さんを育てる36歳の会社員Aさん(モデルケース)でした。
「毎月、家賃を払うだけの生活がもったいなくて。でも6,000万円を超える物件を買って、35年もローンを返済し続けられるのか、正直怖いんです。」
――ご主人が口火を切った言葉に、多くのご家庭が抱える本音が詰まっていました。
同じ世帯年収でも、教育費のかけ方や働き方によって、無理のない住宅予算は大きく異なります。ここからは、マネードクターのFPが実際にどのように不安を紐解いていくのか、相談の様子を紹介します。
世帯年収870万円の家庭はいったいいくらの住宅ローンを組むことができるのか。ご主人から聞かれた具体的な金額は6,500万円でした。
*1無理のない返済負担率の目安は年収の20〜25%以内とされることが多い(住宅金融支援機構2024年度集計表)
*2住宅金融支援機構「2024年度 フラット35利用者調査」では、マンションの年収倍率は約7.0倍、注文住宅は約6.9倍(住宅金融支援機構「フラット35利用者調査」)
※上記は一般的な調査に基づく参考値であり、頭金・他の借入・家族構成により適正額は変わります
実際にマネードクターで使っているキャッシュフロー作成ツール「マネーカルテ」で相談者の情報からキャッシュフローを試算してみたのがこちら。
住宅購入を控えて、いざFPに相談しようと思っても、何を聞いたら良いのか悩ましいものですよね。住宅ローンの返済のことだけに目が向きがちですが、実はもっと聞いてほしいことがあります。
住宅ローンを組む時に大事な家族に必要なお金の中でも、教育費の可視化は欠かせません。
(公立中学→私立高校→私立文系大学の例)
現在は時短勤務をされている奥さま。お子さんの成長とともにフルタイムに復帰するべきか、時短勤務でいるべきかも悩まれているポイントでした。できればお子さんとの時間も大事にしたい。フルタイムのほうが収入はよくなるものの、どの位家計が変わるかも、働き方を検討する材料になります。
住宅は購入して終わりではありません。長い間住んでいると改修が必要になったり、戸建て、マンションそれぞれにランニングコストは変わってきます。購入後にかかるお金もマネーカルテで可視化し、長期の収支を見比べます。
住宅ローンを組むときに考えるのは変動金利か固定金利か。変動金利の場合は金利が上がることも想定しておくことがポイントです。
*1金利1%上昇の不安:借入1,000万円あたり月4〜5,000円程度の返済額増(元利均等・概算)。
*期間固定型(フラット35等)は変動型より金利が高めになりやすい傾向(最新の金利は各金融機関の公式サイトで要確認)。
参考:【フラット35】最新の金利情報(住宅金融支援機構)、日本銀行 「金融政策」
住宅を購入したあとは、毎月の返済を優先し、これまでの資産形成予算を変更したほうがいいのかと悩まれることも。
全体像が見えてくると、購入後、他にも考えておいたほうがいいお金のことがあるのでは?と気になることが増えてきます。
相談を終えたAさんは、来たときよりも少し表情がやわらいでいました。
「まずは作っていただいた、わが家のマネーカルテを持ち帰って、妻ともじっくり話してみたいです」。
住宅購入という大きな決断を、“なんとなくの不安”ではなく“納得できる数字”をよりどころに、そして一度きりではなく折々に見直しながら進めていく――そんな前向きな一歩を踏み出した様子でした。
Q. 世帯年収870万円・子1人の30代共働き夫婦は、6,500万円の住宅ローンを組んでも教育費と老後資金を両立できますか?
A. 夫婦の就労が続き、退職金が見込め、お子さんの進学先が私立文系程度までであれば、6,500万円の借入でも教育費・老後資金を両立できるケースはあります。ただし40歳前後で現金残高が細る時期が生じやすく、奥様の働き方やお子さんの進路が試算と変わると影響が大きくなります。前提が変わるたびにマネーカルテで見直すのがおすすめです。
Q. 住宅ローンは世帯年収の何倍まで借りられますか?
A. 一般的な目安は年収の5〜7倍、無理のない返済負担率は年収の20〜25%以内とされます。世帯年収870万円なら、ゆとり重視で5,500万〜6,000万円程度、上限に近づけると6,000万円台後半という目安です。ただし頭金・他の借入・家族構成で適正額は変わるため、倍率だけで判断せず家計全体で検討しましょう。
Q. 妻が時短勤務中で年収220万円の場合、住宅ローンの借入額はフルタイム復帰前提で考えてもよいですか?
A. フルタイム復帰を前提にした借入は慎重に考えたいところです。将来必ずフルタイムで働けるとは限らず、時短のまま続くと家計のゆとりは縮みやすくなります。夫の収入を軸に無理のない借入額を考え、金利上昇も想定しておくと安心です。フルタイムに戻れた分は、繰上返済やゆとりに回す考え方があります。
Q. 小学生の子どもがいて公立中学に進む予定の場合、教育費はライフプラン表にどこまで入れるべきですか?
A. 公立中学を前提にしても、高校・大学でかかる費用は前提として織り込んでおくのが基本です。習い事や部活動の費用も忘れずに計上し、大学の入学金・受験料はスポット費用として見込みます。住宅ローンの返済と教育費のピークが重なる時期でも家計が回るかを、あらかじめマネーカルテで確認しておきましょう。
Q. 住宅ローン金利が1%上がった場合、30代子育て世帯の家計にはどのくらい影響しますか?
A. 目安として、借入1,000万円あたり月4,000〜5,000円程度の負担増です。6,500万円なら月3万円前後・年37万円ほどの増加イメージになります(前提により変わります)。教育費のピークと重なると影響が出やすいため、金利は上がることもある前提で、余裕をもった借入額を検討しておくと安心です。
Q. 団信に加入したあと、夫婦の生命保険や医療保険はどこまで見直せますか?
A. 団信加入後は、住居費相当の死亡保障を見直せる余地があります。ただし団信でカバーされるのはローン残債のみです。生活費・教育費分の死亡保障や、医療・就業不能への備え、配偶者の保障は残しておくのが一般的です。『必要保障額』を計算し直し、減らす部分と残す部分を切り分けて見直しましょう。
最終更新:2026年9月
出典:住宅金融支援機構「2024年度 フラット35利用者調査」(https://www.jhf.go.jp/about/research/loan/flat35/index.html)ほか。 金利は各金融機関・【フラット35】公式(https://www.flat35.com/)の最新情報をご確認ください。