GG佐藤さんの人生をたどる 「何のために」を見つけるライフラインチャート(FP9)
将来に備えてお金を貯めることも、資産形成を始めることも大切です。
ただ、その前に「何のためにお金を使うのか」「どんな人生を送りたいのか」を考えたことはあるでしょうか。
今回FP9では、元プロ野球選手の佐藤 隆彦さん(以下GG佐藤さん)の人生をライフラインチャートにまとめ、マネードクターの丸山明仁FPと一緒に振り返りました。
野球との出会い、アメリカへの挑戦、結婚、北京五輪での挫折。人生の節目をたどる対話から、「どう生きたいか」「そのためにお金をどう使うか」という話に広がっていきます。
この記事でわかること
・GG佐藤さんの人生を動かした転機
・過去の経験から大切にしていることを整理する視点
・ライフプランを「何のために」から考える理由
・ライフラインチャートを人生設計に生かすヒント

夢の始まりは、父とのキャッチボール
GG佐藤さんが野球を始めたのは、小学校1年生の頃。
きっかけは、野球経験のなかったお父さんが買ってきたグローブとボールでした。
お父さんが野球経験者だったんですか?
ボールを転がすと、当時のGG佐藤さんはきれいにさばいたそうです。その姿を見たお父さんは、「この子はプロ野球選手になる」と感じたといいます。
そこから、お父さんとの野球練習が始まりました。
小学校1年生でチームに入ったんですけど、練習は日曜日だけだったので、父が毎朝6時に起こしに来ました。
毎朝ですか?
365日、6年間です。
休みなしですか?
はい。
測量士だったお父さんは、ピッチャーからキャッチャーまでの距離やボールの角度を計算し、独自の練習方法まで考えていたそう。当時は一般的ではなかった打撃理論を、自分で研究しながら教えてくれたといいます。
野球との出会い (小学生時代)
チームの練習が無い日は毎日、父が練習に付き合う
写真はリトルリーグ時代のGG佐藤さん (本人提供)
勝ちたい気持ちがつないだ、野村克也さんとの出会い
小学生時代に所属していたのは、決して強いチームではありませんでした。
負けることが悔しく、もっと強い環境で野球をしたい。幼いGG佐藤さんが口にした言葉に応えるべく、お父さんは、当時日本一であったチームを調べ、見学に連れて行ってくれました。
団野村さんが監督で、(野村)沙知代さんがオーナー。ノムさん(野村克也さん)が臨時コーチで、たまに来てくれるチームでした 。
すごく豪華ですね 。
「中学生の自分に“ジジイ”って、なかなかですよね」と、GG佐藤さんは笑いながら振り返ります。
ノムさんとの出会いは、僕にとって大きかったですね。言葉もいっぱい残っています 。
技術だけでなく、考えることや目的を持つことを教えてくれたのも野村克也さん。
中学生の頃に受け取った言葉は、その後の選択や、挫折から立ち上がる場面でもGG佐藤さんを支えていきます。
「本当はホームランバッターになりたい」
高校から大学にかけては、思うように結果が出ない時期が続きました。
周囲から見れば、プロ野球選手という夢は遠いものに見えていたかもしれません。それでもGG佐藤さんの中には、消えなかった思いがありました。転機は大学4年生でした。
自分に問いかけたんです。どうなりたいのか。理想の自分はどんな姿なのか。本当はどんな人生を歩みたいのかって。
そこで答えが出たんですか?
俺は本当はホームランバッターになりたいんだって。監督やコーチが望む姿ではなくて、自分が望む姿になろうと思いました。
そこから変わったんですね。
人生のスイッチが入った気がします。
その後、GG佐藤さんはアメリカへ渡り、フィラデルフィア・フィリーズの入団テストに合格。マイナーリーグで3年間経験を積み、日本に戻って西武ライオンズの入団テストを受け、プロ野球選手への道をつかみます。
米国マイナー挑戦 (2001-2003年)
プロになりたいという強い思いから、海を越えアメリカに渡りマイナーリーグでプレー
「30本打ったら結婚」明確な目標が力になった
ライフラインチャートが大きく上向く2007年。丸山FPが理由を尋ねると、返ってきた言葉は「妻との出会い」についてでした。
会った瞬間に結婚するって決めたんです。2回目のデートで結婚指輪を買っていました。
すごいですね。
その年に何本ホームランを打ちたいのかと聞かれて、15本と答えたら、「30本打ったら結婚してあげる」って言われたんです。
おかげで30本という明確な目標ができました。
打ち方を変え、トレーニングを変え、対戦相手のデータも徹底的に調べました。
シーズン25本、練習試合5本。「合わせて30本」。
その約束が、結婚へとつながりました
西武ライオンズ入団 (2003年)
野手、内野、外野転向と試行錯誤の日々の中で焦らず自らのスタイルを確立し、2007年にはシーズン25本塁打を放ち、「愛の波動砲」で人気を確立
北京五輪での挫折と、支えてくれた人たち
2008年、GG佐藤さんはオールスターに選出され、日本代表として北京五輪に出場しました。野球の成績は好調で、キャリアが大きく上向いた時期でした。
一方で、北京五輪での経験は、GG佐藤さんにとって長く向き合うことになる出来事でもありました。
試合の後、妻に正直な辛い気持ちをメールで送りました。試合中も申し訳なさすぎて、日本のベンチにも帰れませんでした。
今は話せる状態になっていますけど、当時は言葉も届かなかったんですね。
もう殻に閉じこもっていました。準備不足は、大切な人の思いを裏切ることになるんだと思いました。
帰国後、もう一度前を向くきっかけをくれたのは、ライオンズのファンだったといいます。復帰初戦では、応援の言葉が書かれた横断幕が掲げられ、その光景に胸を打たれました。
ファンがすごく温かかったんです。もう一回頑張ろうと思いました。
その後、野球を嫌いなまま終わりたくないと考えたGG佐藤さんは、イタリアへ渡ります。心を整え、最後は地元・千葉の千葉ロッテマリーンズでプレーし、野球選手としてのキャリアを終えました。
失敗を消すのではなく、その先に生かす
北京五輪から12年後、野村克也さんとの再会がありました。長い間、自分を責め続けていたGG佐藤さんに、野村さんは言葉をかけました。
「北京でエラーしたけれど、その時の記憶に残ったのは誰だ。監督の星野とお前だけだ」と言われました。
「人の記憶に残ることがどれだけ大変で、素晴らしいことかわかるか。お前の勝ちだ。勝利者だよ。その経験を生かして生きていきなさい」
って。
この言葉をきっかけに、GG佐藤さんは北京五輪の経験を封じ込めるのではなく、自分の言葉で発信するようになりました。失敗そのものは変えられなくても、その後の選択は変えられる。そう思える大きな人生の転機だったとGG佐藤さんは話します。

(トークイベントでのGG佐藤さん)
お金の話は、人生の話から始まる
ライフラインチャートを見ながら、大学時代、プロ入り、北京五輪、イタリア挑戦と、GG佐藤さんの山も谷も含めて振り返ってみると、そのとき何を大切にしていたのかが見えてきました。成功した場面だけでなく、思うようにいかなかった場面にも、その人らしい選択の理由が残っています。
話題は自然と、「これからをどう考えるか」へ移っていきました。
実は、お客さまのご相談でも同じことを感じるんです。
相談でも、ですか?
人生が良い方向に動いていく人って、自分が何を大切にしたいのかを言葉にできていることが多いんです。
なるほど。
「資産形成をしたい」と話していても、「そのお金で何を実現したいのか」までは整理できていないことがあるんです。
お金を増やすこと自体がゴールになってしまうと、どこまでいっても終わりがないんですよね。
確かに。何のために増やしたいのかがないとキリがないですね。
だから私たちは、先に人生の話を聞くんです。何を実現したいのか。
どんな暮らしがしたいのか。そのために、お金をどう使うのかを一緒に考えていきます。
FP相談って聞くとお金の話だと思っていたけど、本当は人生の話なんですね。
私はそう思っています。
お金は目的じゃなくて、人生を支える道具ですから。
人の力を借りられる人は、強い
この日の対談の中で何度もGG佐藤さんから出てきたのは、「人」の存在でした。
大学時代の苦しい時期も、プロ入り後の挑戦も、北京五輪のあとも。
いつも周りには、自分を信じてくれる人がいたとGG佐藤さんは振り返ります。
僕、自分のことを信じられない時期が結構あったんです。
そうなんですか。
でも、そんな時でも『お前ならできる』って言ってくれる人がいたんですよね。
大きな存在ですね。
自分で判断できない時は、自分を信じてくれている人を信じて進んできたところがあります。

どう生きたいかって、一人ではなかなか考えられないですよ。壁打ちが必要です。
そうですね。だからFPは、お客さまの人生を一緒に考える伴走者なんです。
人の力を借りられる人の方が、強いと思います。
これまでの選択が、これからのお金の使い方を教えてくれる
最後にGG佐藤さんは、中学生の頃から野村克也さんに繰り返し聞かされていた言葉を教えてくださいました。
「金を残して三流。名を残して二流。人を残して一流」
ノムさんは「お前たちの使命は何だ。何のために生きるのかを考えろ」と、中学生の僕たちに何度も話していました。
お金も同じです。何のために使うのかが決まると、選び方が変わります。
ライフラインチャートは、過去の出来事に点数を付けるためのものではありません。
うれしかったこと、苦しかったこと、挑戦したこと、誰かに支えられたことを時系列で整理し、自分がどのような場面で動き、何を大切にしてきたのかを確かめるためのものです。
人生で一番充実していたのはいつでしょうか。今の自分をつくった出来事は何でしょうか。迷ったときに背中を押してくれた人は誰でしょうか。これまでの選択を振り返ると、これからの選択で大切にしたいことも整理しやすくなります。
将来のお金について考えるときも、最初に向き合いたいのは金額や商品といった数字や制度だけではありません。「何のために」「どんな暮らしをしたいのか」を言葉にすることが、これからの選択を考える手がかりになります。まずは自分のライフラインチャートを作り、これまでの人生を振り返ってみてください。過去を整理することが、これからのお金の使い方を考える最初の一歩になります。