将来に備えてお金を貯めることも、資産形成を始めることも大切です。
ただ、その前に「何のためにお金を使うのか」「どんな人生を送りたいのか」を考えたことはあるでしょうか。
今回FP9では、元プロ野球選手の佐藤 隆彦さん(以下GG佐藤さん)の人生をライフラインチャートにまとめ、マネードクターの丸山明仁FPと一緒に振り返りました。
野球との出会い、アメリカへの挑戦、結婚、北京五輪での挫折。人生の節目をたどる対話から、「どう生きたいか」「そのためにお金をどう使うか」という話に広がっていきます。
GG佐藤さんが野球を始めたのは、小学校1年生の頃。
きっかけは、野球経験のなかったお父さんが買ってきたグローブとボールでした。
ボールを転がすと、当時のGG佐藤さんはきれいにさばいたそうです。その姿を見たお父さんは、「この子はプロ野球選手になる」と感じたといいます。
そこから、お父さんとの野球練習が始まりました。
測量士だったお父さんは、ピッチャーからキャッチャーまでの距離やボールの角度を計算し、独自の練習方法まで考えていたそう。当時は一般的ではなかった打撃理論を、自分で研究しながら教えてくれたといいます。
小学生時代に所属していたのは、決して強いチームではありませんでした。
負けることが悔しく、もっと強い環境で野球をしたい。幼いGG佐藤さんが口にした言葉に応えるべく、お父さんは、当時日本一であったチームを調べ、見学に連れて行ってくれました。
「中学生の自分に“ジジイ”って、なかなかですよね」と、GG佐藤さんは笑いながら振り返ります。
技術だけでなく、考えることや目的を持つことを教えてくれたのも野村克也さん。
中学生の頃に受け取った言葉は、その後の選択や、挫折から立ち上がる場面でもGG佐藤さんを支えていきます。
高校から大学にかけては、思うように結果が出ない時期が続きました。
周囲から見れば、プロ野球選手という夢は遠いものに見えていたかもしれません。それでもGG佐藤さんの中には、消えなかった思いがありました。転機は大学4年生でした。
その後、GG佐藤さんはアメリカへ渡り、フィラデルフィア・フィリーズの入団テストに合格。マイナーリーグで3年間経験を積み、日本に戻って西武ライオンズの入団テストを受け、プロ野球選手への道をつかみます。
ライフラインチャートが大きく上向く2007年。丸山FPが理由を尋ねると、返ってきた言葉は「妻との出会い」についてでした。
2008年、GG佐藤さんはオールスターに選出され、日本代表として北京五輪に出場しました。野球の成績は好調で、キャリアが大きく上向いた時期でした。
一方で、北京五輪での経験は、GG佐藤さんにとって長く向き合うことになる出来事でもありました。
帰国後、もう一度前を向くきっかけをくれたのは、ライオンズのファンだったといいます。復帰初戦では、応援の言葉が書かれた横断幕が掲げられ、その光景に胸を打たれました。
その後、野球を嫌いなまま終わりたくないと考えたGG佐藤さんは、イタリアへ渡ります。心を整え、最後は地元・千葉の千葉ロッテマリーンズでプレーし、野球選手としてのキャリアを終えました。
北京五輪から12年後、野村克也さんとの再会がありました。長い間、自分を責め続けていたGG佐藤さんに、野村さんは言葉をかけました。
この言葉をきっかけに、GG佐藤さんは北京五輪の経験を封じ込めるのではなく、自分の言葉で発信するようになりました。失敗そのものは変えられなくても、その後の選択は変えられる。そう思える大きな人生の転機だったとGG佐藤さんは話します。
(トークイベントでのGG佐藤さん)
ライフラインチャートを見ながら、大学時代、プロ入り、北京五輪、イタリア挑戦と、GG佐藤さんの山も谷も含めて振り返ってみると、そのとき何を大切にしていたのかが見えてきました。成功した場面だけでなく、思うようにいかなかった場面にも、その人らしい選択の理由が残っています。
話題は自然と、「これからをどう考えるか」へ移っていきました。
この日の対談の中で何度もGG佐藤さんから出てきたのは、「人」の存在でした。
大学時代の苦しい時期も、プロ入り後の挑戦も、北京五輪のあとも。
いつも周りには、自分を信じてくれる人がいたとGG佐藤さんは振り返ります。
最後にGG佐藤さんは、中学生の頃から野村克也さんに繰り返し聞かされていた言葉を教えてくださいました。
ライフラインチャートは、過去の出来事に点数を付けるためのものではありません。
うれしかったこと、苦しかったこと、挑戦したこと、誰かに支えられたことを時系列で整理し、自分がどのような場面で動き、何を大切にしてきたのかを確かめるためのものです。
人生で一番充実していたのはいつでしょうか。今の自分をつくった出来事は何でしょうか。迷ったときに背中を押してくれた人は誰でしょうか。これまでの選択を振り返ると、これからの選択で大切にしたいことも整理しやすくなります。
将来のお金について考えるときも、最初に向き合いたいのは金額や商品といった数字や制度だけではありません。「何のために」「どんな暮らしをしたいのか」を言葉にすることが、これからの選択を考える手がかりになります。まずは自分のライフラインチャートを作り、これまでの人生を振り返ってみてください。過去を整理することが、これからのお金の使い方を考える最初の一歩になります。